7月が近づくと、金沢の和菓子店やスーパーには色鮮やかな「氷室饅頭(ひむろまんじゅう)」が並び始めます。石川県で暮らしている方にとってはおなじみの存在ですが、県外の方にはあまり知られていないかもしれません。
ふっくらとした酒まんじゅうに見える氷室饅頭ですが、実は加賀藩の時代から受け継がれてきた伝統的な風習と深い関わりがあります。
なぜ7月1日に食べるのでしょうか。また、「氷室」とは何を意味するのでしょうか。
今回は、金沢の夏の風物詩である氷室饅頭の歴史や由来、色の意味についてわかりやすく解説します。
氷室饅頭とは?

氷室饅頭(ひむろまんじゅう)とは、毎年7月1日の「氷室の日」に食べられる饅頭のことです。主に石川県、特に金沢市を中心に親しまれており、酒まんじゅう生地で餡を包んだ素朴な和菓子として知られています。
氷室の日が近づくと、和菓子店には赤・白・緑の3色の氷室饅頭が並び、多くの家庭で購入されます。石川県では、「氷室饅頭を食べると夏を元気に過ごせる」という言い伝えもあり、無病息災を願う風習として現在も受け継がれています。
氷室の日とは?
氷室の日とは、毎年7月1日に行われる石川県の伝統行事です。その起源は江戸時代にさかのぼります。
当時は冷蔵庫がなく、夏に氷を手に入れることは大変貴重なことでした。そこで冬の間に積もった雪や氷を保存するために造られたのが「氷室」です。
加賀藩では、冬に蓄えた氷を夏まで保存し、旧暦6月1日に江戸の将軍家へ献上していました。現在の7月1日にあたるこの日が、「氷室の日」として受け継がれているのです。
氷室とは何だったの?
氷室とは、雪や氷を保存するための施設のことです。山間部に作られた専用の貯蔵庫に大量の雪を詰め込み、おがくずなどで覆うことで夏まで保存していました。
今では当たり前に冷たい飲み物やアイスクリームを楽しめますが、江戸時代には夏に氷を使えること自体が特別なことでした。
加賀藩では現在の石川県白山市周辺にあった氷室から氷を取り出し、はるばる江戸まで運んで将軍に献上していたと伝えられています。そのため氷室は、加賀藩の豊かさや技術力を象徴する存在でもありました。
なぜ氷室饅頭を食べるの?
氷室の日には本来、氷を口にして暑さをしのぎたいところですが、昔は誰もが氷を手に入れられるわけではありませんでした。そこで氷に見立てた饅頭を食べ、夏を健康に過ごせるよう願ったことが氷室饅頭の始まりとされています。
また、厳しい暑さが始まる時期に栄養をつけ、無病息災を祈る意味も込められていました。
現代でも石川県では、「氷室饅頭を食べないと夏が来た気がしない」という人も少なくありません。単なる和菓子ではなく、季節の節目を感じる大切な風習なのです。
氷室饅頭の3色にはどんな意味がある?

氷室饅頭といえば、赤・白・緑の3色を思い浮かべる方も多いでしょう。
実は色には諸説ありますが、それぞれに縁起の良い意味が込められているとされています。
赤色
赤色は魔除けや厄除けを表す色とされています。昔から赤色には邪気を払う力があると考えられてきました。
白色
白色は清らかさや純粋さを表します。神事などでも使われる縁起の良い色です。
緑色
緑色は、健康や生命力を象徴する色とされています。夏を元気に乗り切る願いが込められているともいわれています。
こうした意味を知ると、何気なく食べていた氷室饅頭もより特別なものに感じられるのではないでしょうか。
金沢の夏に受け継がれる氷室饅頭文化
現在でも氷室の日が近づくと、石川県内の和菓子店やスーパーには氷室饅頭が並びます。家族の人数分を買い求めたり、親戚や知人へ贈ったりする家庭もあります。
また、学校や職場で氷室饅頭の話題が出ることもあり、石川県の人々にとっては夏の訪れを感じる身近な文化となっています。
観光で金沢を訪れる方にとっても、この時期にしか味わえない地域ならではの風習に触れる貴重な機会といえるでしょう。
おわりに|氷室饅頭は金沢の夏を知らせる風物詩

氷室饅頭は、加賀藩の時代から受け継がれてきた氷室の日の風習と深く結びついた和菓子です。その背景には、冬の氷を大切に保存して将軍へ献上した歴史や、暑い夏を健康に過ごしたいという人々の願いが込められています。
今では7月が近づくと和菓子店やスーパーに並び、多くの石川県民が夏の訪れを感じる存在となっています。
金沢を訪れる機会があれば、ぜひ氷室饅頭を味わいながら、その土地に息づく歴史や文化にも目を向けてみてください。
地域の風習を知ることで、旅はより深く、より思い出深いものになるはずです。
画像提供:石川県観光連盟( https://www.hot-ishikawa.jp/ )

