いしるとは?能登の海が育んだ伝統の魚醤|石川県に伝わる発酵文化をやさしく解説

いしる

石川県を旅していると、「いしる鍋」や「いしる干し」といった料理を目にすることがあります。

「いしるって何だろう?」

そう思われた方も多いのではないでしょうか。

いしる(いしりとも呼ばれる)は、能登地方で古くから受け継がれてきた伝統的な魚醤(ぎょしょう)です。

醤油とは少し違う、魚のうま味がぎゅっと詰まった発酵調味料で、能登の食文化を語るうえで欠かせない存在です。

その歴史や背景を知ると、旅先で味わう料理がより印象深いものになります。

今回は、石川県の伝統調味料「いしる」の魅力をやさしくご紹介します。

いしるとは?

いしる

いしるとは、魚を塩漬けにして長い時間発酵・熟成させて作る魚醤です。魚に含まれるたんぱく質が時間をかけて分解され、濃厚なうま味へと変わります。

見た目は濃い茶色で、香りは独特ですが、料理に加えると深いうま味とコクを生み出します。

石川県では「いしる」や「いしり」と呼ばれ、特に奥能登地方で昔から家庭料理や郷土料理に使われてきました。

なぜ能登で生まれたのか

能登半島は三方を海に囲まれ、昔から豊かな漁場として知られていました。

一方で、冷蔵庫がなかった時代は、魚を長く保存する工夫が欠かせませんでした。

そこで生まれた知恵のひとつが、塩と発酵を利用した保存方法です。

魚を余すことなく活用し、長期間保存できるよう工夫した結果、いしるが受け継がれてきました。

いしるは単なる調味料ではなく、自然と共に暮らしてきた能登の人々の知恵そのものなのです。

いしるには主に2種類ある

能登のいしるには、主に次の2種類があります。

イカのいしる

イカの内臓を塩漬けにして熟成させたもので、香りが豊かで、奥深いうま味が特徴です。

能登では鍋料理や煮物などによく使われています。

イワシのいしる

イワシを原料として作られる魚醤です。イカのいしるよりも比較的すっきりとした味わいで、焼き魚や炒め物など幅広い料理に利用されています。

同じ「いしる」でも、原料によって風味が異なるため、食べ比べてみるのも旅の楽しみのひとつです。

魚醤とは?醤油との違い

いしる

私たちが普段使う醤油は、大豆や小麦を発酵させて作り、魚醤は魚を原料にした発酵調味料です。そのため、魚醤には魚由来の濃厚なうま味成分が豊富に含まれています。

少量加えるだけでも料理に深いコクが生まれるため、「うま味の調味料」として古くから親しまれてきました。

日本三大魚醤のひとつ

能登のいしるは、日本三大魚醤のひとつに数えられています。

残る2つは、秋田県の「しょっつる」と、香川県の「いかなご醤油」です。

どれも地域の魚や気候を生かして育まれた伝統食品で、それぞれ味や香りに個性があります。

同じ魚醤でも土地ごとの違いを知ると、日本の食文化の奥深さが感じられるでしょう。

旅先で味わってみたい「いしる料理」

いしる

能登では、いしるを使った郷土料理が楽しめます。

代表的なのが「いしる鍋」で、魚介や野菜をいしるで味付けした鍋は、素材本来のうま味を引き立てる優しい味わいです。

ほかにも、

  • 焼き魚
  • 干物
  • 野菜炒め
  • 炊き込みご飯

など、さまざまな料理でいしるが活躍しています。

飲食店だけでなく、お土産店で販売されていることも多く、自宅でも能登の味を楽しめます。

旅先でいしるを探すなら

いしるは、能登地方のお土産店や道の駅、地元のスーパーなどで購入できます。調味料として販売されているほか、いしるを使った鍋つゆや加工食品が並ぶこともあります。

「旅の思い出を自宅でも楽しみたい」という方は、お土産として持ち帰るのもおすすめです。

旅のワンポイント

能登では、道の駅や地元のスーパーをのぞいてみるのも旅の楽しみのひとつです。

観光地のお土産店では見かけない地元ならではの商品や、小規模な蔵元が造るいしるに出会えることがあります。時間に余裕があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。

旅の豆知識|石川県に伝わる数多くの発酵文化

石川県はいしるをはじめ、かぶら寿司やふぐの卵巣の糠漬け・粕漬けなど、発酵の知恵が息づく地域です。

地酒の酒蔵が多い県ということも知られ、厳しい冬や豊かな海の恵みの中で育まれた発酵文化は、食材を大切に使い切る先人の工夫から生まれました。

郷土料理を味わう際は、その背景にある歴史や暮らしにも目を向けると、その土地ならではの魅力をより深く感じられるでしょう。

おわりに|能登の発酵文化を知ると、旅はもっと味わい深くなる

いしるは、能登の海と人々の暮らしが育んだ伝統の魚醤です。魚を無駄なく生かそうという知恵から生まれ、長い年月をかけて受け継がれてきました。

その背景を知ることで、能登で味わう料理はもちろん、お土産として手に取る一本のいしるにも、より深い価値を感じられるはずです。

旅の楽しみは、美しい景色やおいしい料理だけではありません。

その土地で受け継がれてきた歴史や文化を知ることで、一皿の料理や一つのお土産にも、物語があることに気づきます。

石川県を訪れた際は、ぜひ「いしる」の味わいとともに、能登の豊かな発酵文化にも触れてみてください。きっと旅の思い出が、より深く心に残ることでしょう。

画像提供:石川県観光公式サイト(石川県観光連盟)( https://www.hot-ishikawa.jp/