「温泉にはマナーが多そうで不安……。」
そんなふうに感じたことはありませんか。
初めて温泉を訪れる方はもちろん、久しぶりに温泉旅行へ出かける方の中にも、正しい入り方に自信がないという声は少なくありません。
しかし、温泉のマナーは決して難しいものではないのです。 大切なのは、自分だけでなく、次に入る人や一緒に利用する人も気持ちよく過ごせるよう心掛けることにあります。
その理由さえ知れば、一つひとつのマナーにも自然と納得できるでしょう。
今回は、温泉の基本的な入り方とその理由をやさしくご紹介します。
なぜ温泉にはマナーがあるの?

温泉は自宅のお風呂とは違い、多くの人が利用する共同の場所です。 一人でもルールを守らなければ、お湯が汚れたり、周りの人が落ち着いて入浴できなくなったりすることがあります。
だからこそ、温泉のマナーは「禁止事項」ではありません。みんなが心地よく過ごすための、温かい思いやりとして受け継がれてきました。
入浴前のマナー
温泉を気持ちよく楽しむためには、湯船に入る前の準備が大切です。 ここでの心掛けは、ご自身のためだけでなく、一緒に利用する人や次に温泉へ入る人への配慮にもつながります。
少しの意識で温泉本来の心地よさを守ることができますから、まずは基本となる二つのポイントを確認しておきましょう。
脱衣所では落ち着いて準備をする
脱いだ衣類は、「ロッカー」や「脱衣かご」へきれいにまとめて入れましょう。濡れた足で歩き回る場所でもあるため、滑らないよう足元には十分注意してください。 なお、貴重品は備え付けの鍵付きロッカーなどを利用すると安心です。
まずは体を洗い、かけ湯をする
湯船へ入る前には、体の汚れを落とすのが基本です。 そのあと、桶などで温泉を足元から少しずつかける「かけ湯」を行いましょう。
かけ湯には、次のような二つの重要な役割があります。
- 湯船を清潔に保つ
- 熱いお湯に体を慣らす
いきなり肩まで浸かると心臓や血圧に負担がかかることもあるため、ゆっくりとお湯に慣らすことが大切です。
温泉に入るときのマナー

「かけ湯」を済ませたら、いよいよ湯船に入ります。 一人ひとりが少し気を配るだけで、誰もが気持ちよく過ごせる空間になるでしょう。 ここでは、入浴中に意識したい基本的なマナーをまとめました。
湯船には静かに入る
勢いよく飛び込んだり、お湯を大きくかき回したりするのは避けましょう。温泉は泳ぐ場所ではなく、ゆっくりと体を休めるための空間です。 静かな雰囲気を大切にすれば、周りの人も心地よい時間を過ごせます。
タオルは湯船につけない
小さなタオルは、頭の上や湯船の縁に置いておくのが一般的です。 タオルの繊維や付着した汗がお湯に混ざるのを防ぐため、湯船へ入れないことがマナーとされています。
長い髪はまとめる
髪がお湯につかないよう、長い髪は結んでから入浴しましょう。これも、お湯を清潔に保つための大切な配慮です。
大きな声で話さない
温泉には、静かな時間を楽しみに訪れる方もいらっしゃいます。会話を楽しむのは構いませんが、周りに響くような大声は控えめにしましょう。 落ち着いた静寂も、温泉が持つ大きな魅力の一つです。
写真撮影は控える
浴場では、スマートフォンやカメラの使用を禁止している施設がほとんどです。 お互いのプライバシーを守るためにも、浴場内での撮影は絶対に行わないようにしてください。
温泉から上がるときのマナー

温泉は、お湯から上がったあとにも少しだけ気を配ることで、最後まで気持ちよく利用できます。脱衣所を利用する人への配慮や、入浴後の体調管理も大切なポイントです。 旅を快適に締めくくるためにも、次の行動を押さえておきましょう。
脱衣所へ戻る前に体の水気を拭く
浴室を出る前に、手持ちの小さなタオルで体の水気を軽く拭き取りましょう。濡れたまま脱衣所へ戻ると床に水滴が落ちて滑りやすくなり、他の利用者に危険が及びます。 ほんの少しの工夫で、次に使う人も気持ちよく脱衣所を利用できるようになります。
水分補給を忘れずに
温泉では思っている以上に汗をかくため、入浴後の水分補給は欠かせません。 また、長時間入り続けるよりも、適度に休憩を挟みながら楽しむ方が体への負担を減らせます。
温泉のマナーでよくある疑問

温泉を利用する際には、「これは大丈夫なのかな?」と迷う場面もあるかと思います。 施設によってルールが異なる場合もあるため、基本的な考え方を知っておくと安心です。
Q1. 手術の傷痕がありますが、隠して入浴できますか?
A. 「専用の入浴着(バスタイムカバー)」の着用が公式に認められています。
厚生労働省や各自治体、総務省などは、手術等の傷痕や皮膚疾患、火傷の痕などを持つ方々が周囲を気にせず入浴できるよう、「入浴着」を着用したままの入浴を歓迎・推奨しています。 かつては「湯船に布を持ち込むのはNG」と一律で断られるケースもありましたが、現在は衛生面でも問題がないと証明され、多くの施設で理解が進んできました。 周囲に説明するのが負担な場合は、受付時に一言伝えておくとよりスムーズです。
Q2. 体を洗わず、かけ湯だけで入るのはマナー違反ですか?
A. かけ湯だけでもマナー違反ではありませんが、「念入りなかけ湯」が必須です。
温泉の基本ルールは「お湯を汚さないこと」にあります。そのため、湯船に入る前には必ずお湯で体を流さなければなりません。
必ずしも最初に石鹸で全身を洗う必要はありませんが、かけ湯だけで済ませる場合は、特にお腹から下(お尻や足元)を念入りに洗い流すのがマナーです。
かけ湯には「お湯の温度に体を慣らし、血圧の急上昇を防ぐ(ヒートショック防止)」という医療の観点からも大切な目的があります。
Q3. 脱衣所の床を濡らさないためのコツはありますか?
A. 浴場から出る直前に「足元までしっかり固く絞ったタオル」で体を拭くのが鉄則です。
脱衣所の床が濡れていると、次に使う人が不快に感じるだけでなく、滑って転倒する原因になり大変危険です。 浴場から脱衣所へ一歩踏み出す前に、浴場内で手拭い(フェイスタオル)を固く絞り、髪や全身の水分を大まかに拭き取りましょう。
水滴がポタポタと落ちない状態にしてから脱衣所へ進み、バスタオルで仕上げを拭くのが正しい手順です。
Q4. 髪が短くても、結ばずに入浴して大丈夫ですか?
A. 肩につかない長さであっても、湯船にお湯が浸かる(または髪が触れる)のは避けましょう。
「短いから抜けない・浮かない」と思いがちですが、湯船の中で髪が顔や首に触れる体勢になると、お湯に髪が浸かってしまいます。
髪の毛には目に見えない埃や整髪料が残っていることもあるため、少しでもお湯に触れる可能性がある場合は、ヘアゴムで結ぶか、ヘアクリップで固定してみてください。
またはタオルを頭に巻き、湯船に入らないよう工夫してみましょう。
Q5.孫と一緒に入る際、何歳まで混浴ができますか?
A. 厚生労働省の指針では「おおむね7歳以上」の混浴が制限されています。自治体や施設ごとに一桁の年齢(7歳〜9歳など)で細かく定められています。
お孫さんと一緒に入浴される際、年齢制限を誤ると周囲のトラブルになりかねません。
かつては「10歳まで」とされていた自治体が多かったのですが、子どもの発育発達の早期化などを背景に、現在は「7歳以上(小学1年生以上)の混浴は不可」とする自治体や施設が全国的に増えています。
事前に訪問する施設のWebサイトなどで、制限年齢を確認しておくのが最も確実な方法です。
日本には数多くの温泉地がありますが、すべてが同じ利用方法とは限りません。
例えば、源泉をそのまま楽しむために石けんの使用を制限している施設や、熱い湯とぬるめの湯を交互に楽しめる温泉、混浴や足湯を備えた温泉など、それぞれに独自の特色があります。
旅先では施設内の案内表示に必ず目を通し、その温泉ならではの魅力を安心して楽しんでください。
おわりに|マナーの先にある思いやりを大切に
温泉のマナーは、決して難しい決まりごとではありません。 一つひとつの行動には、お湯を清潔に保つことや、周りの人が気持ちよく過ごせるようにするための理由が存在します。
すべてを完璧に覚えようとする必要はありません。 「次に入る人のことを少しだけ考える。」 その温かい気持ちがあれば、自然と温泉での振る舞いも身についていくでしょう。
理由を知ることは、日本の素晴らしい温泉文化を知ることでもあります。 次に温泉を訪れる際は、ぜひ今回ご紹介したマナーを思い出し、心も体もゆったりと癒やされるひとときをお過ごしください。
「やさしい旅時間」では、旅先で安心して過ごせるよう、食事や温泉、旅館、神社などで役立つマナーを、その理由や文化とともに分かりやすくご紹介しています。
画像提供:石川県観光公式サイト(石川県観光連盟)( https://www.hot-ishikawa.jp/ )


