鳥居の意味とマナーをおさらい|朱色の秘密や形の系統を知る「大人の神社旅」

鳥居の意味とマナー

神社を訪れたとき、私たちを最初に出迎えてくれる「鳥居(とりい)」。鮮やかな朱色のものから、苔むした渋い石造りのものまで、その姿は様々です。

「なぜ神社には鳥居があるのだろう?」

「くぐる時に、何か決まりはあるのかしら?」

と疑問に思ったことはありませんか。

普段何気なくくぐっている鳥居ですが、その歴史や意味を知ると、いつもの境内が全く違った景色に見えてきます。

今回は、大人旅がもっと豊かになる鳥居の意味とマナーについてお届けします。

鳥居の本来の意味とは?「神域」と「人間界」の境界線

鳥居の意味とマナー

鳥居が持つ最も重要な役割は、「ここからは神様がお鎮(しず)まりになる神聖な場所(神域)ですよ」という境界線(結界)を示すことです。いわば、神様のおわす場所における「玄関門」のようなもの。

複数の鳥居がある神社では、鳥居をくぐるごとに私たちは日常の穢(けが)れを払い、神聖な空気へと足を踏み入れることになります。

なぜ「鳥(とり)」の「居(い)」と書くのか?

「鳥居」という名前の由来には諸説ありますが、最も有名なのが日本神話「古事記」の一節です。

天照大御神(アマテラスオオミカミ)が、天岩戸(あめのいわと)に隠れて世界が暗闇になった際、神々が鶏を鳴かせて外に誘い出そうとしました。このとき、「鶏を止まらせた木」が鳥居の起源とされています。

古来、鳥は「神様の使い」であり、常世(とこよ:神の国)と現世(うつしよ:人間の国)を行き来する霊鳥と考えられていました。つまり鳥居とは、「神の使いである鳥がとまる場所」を意味しているのです。

鳥居をくぐる時の正しいマナー

鳥居の意味が分かると、そのくぐり方にも自然と心がこもるようになります。神様に敬意を表す、大人の参拝マナーをおさらいしましょう。

① くぐる前には「一礼」をする

鳥居は神様の家の玄関です。人の家にお邪魔するときに「失礼します」と言うように、鳥居の手前で足を止め、本殿に向かって一礼(一拝)をします。

帽子をかぶっている場合は、このときに脱ぐのがスマートです。

② 中央ではなく「端」を歩く

参道の中央は「正中(せいちゅう)」と呼ばれ、神様が通る道とされています。そのため、参道を歩くときは左側か右側のどちらかの端を歩くのが基本です。

鳥居をまたぐ際、中央に近い方の足から踏み出すと、神様に背を向けない美しい所作になります。

③ 複数の鳥居がある場合は、すべてくぐる

大きな神社になると、「一の鳥居」「二の鳥居」「三の鳥居」と、本殿に向かっていくつかの鳥居が並んでいます。これは、くぐるたびに身が清められ、神様に近づいていくことを意味します。

「足が疲れるから」と脇道から入るのではなく、ぜひ一の鳥居から順に楽しんで歩いてみてください。

実は2つの系統がある?鳥居の「形」を見分ける楽しみ

一見どれも同じように見える鳥居ですが、実は大きく分けて「神明(しんめい)系」「明神(みょうじん)系」の2つの系統があり、そこからさらに数十種類に細分化されます。

旅先で見分けられるようになると、散策がぐっと面白くなります。

系統主な特徴代表的な神社
神明(しんめい)系全体的に直線的でシンプル。飾り気がなく、素朴な木の美しさが特徴。伊勢神宮(三重)、熱田神宮(愛知)など
明神(みょうじん)系上部の横木(笠木)が反り上がっており、装飾的で華やか。明治神宮(東京)、伏見稲荷大社(京都)など

旅先で注目したい「ユニークな鳥居」

基本の2系統以外にも、旅の目的地にしたい個性豊かな鳥居があります。

三ツ鳥居(みつとりい)

1つの大きな鳥居の左右に、小さな鳥居が2つ合体した極めて珍しい形です。奈良県の三輪明神(大神神社)などが有名で、神聖な禁足地を守るためのものと言われています。

両部鳥居(りょうぶとりい)

鳥居の柱を支えるように、前後に小さな控え柱(4本の足)がついている形です。水の中に立つ広島県の厳島神社や、和歌山県の熊野那智大社などで見られ、構造を強くするための知恵でもあります。

色に隠された秘密。なぜ「朱色」の鳥居が多いのか?

鳥居といえば「鮮やかな朱色(赤)」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。あの色にも、大切な意味と先人の知恵が隠されています。

① 魔除けと豊穣の象徴

古来、朱色(赤)は「命、火、太陽」を表す色であり、魔力や災厄を払う力(魔除け)があると信じられてきました。また、お稲荷さんに代表されるように、五穀豊穣を願う気持ちも込められています。

② 木材を守る「防腐剤」の役割

鳥居の朱色には実用的な理由もあります。朱色の塗料の原料である「水銀(丹)」や「酸化鉄(ベンガラ)」には、木材を虫や腐食から守る防腐剤の効果があります。木造建築を長く美しく保つための知恵だったのです。

旅の豆知識|あえて色を塗らない鳥居も

伊勢神宮や出雲大社の一部など、歴史の古い神社では塗装をしない「白木(しらき)の鳥居」が多く見られます。

これは「自然のままが最も神聖である」という、日本古来の原始的な信仰の形を残しているためです。

次の旅で訪れたい|一度は見たい日本の名鳥居

最後に、これまでご紹介した意味や形、歴史を実際に肌で感じられる、日本屈指の「名鳥居」がある神社をご紹介します。鳥居を見るためだけに旅をする価値のある、素晴らしい鳥居ばかりです。

①【広島県】厳島神社 : 海に浮かぶ、美しき大鳥居

世界遺産でもある厳島神社の「大鳥居」は、言わずと知れた名所です。満潮時には瀬戸内海に優美に浮かび、干潮時には鳥居の足元まで歩いていくことができます。

実はこの鳥居、海底に深く埋まっているわけではなく、自重(自身の重み)と、先人の計算された建築構造だけで波に耐えて立っているというから驚きです。柱の形状は、足元をしっかり支える「両部鳥居(りょうぶとりい)」の代表格です。

②【京都府】伏見稲荷大社 : 異世界へ続く、千本鳥居

山の上まで果てしなく続く朱色のトンネル「千本鳥居」。この鳥居はすべて、江戸時代以降に参拝客から「願いが通った」御礼として奉納されたものです。

一歩足を踏み入れると、光と影が織りなす幻想的な世界に包まれ、まさに神域に迷い込んだような心地よさを味わえます。「朱色による魔除けと防腐効果」を、視覚全体で最も強く体感できる場所です。

③ 【神奈川県】箱根神社 : 芦ノ湖に佇む、清らかな「平和の鳥居」

古くから関東総鎮守(そうちんじゅ)として尊崇を集める箱根神社。その象徴ともいえるのが、芦ノ湖の水面にまっすぐ立つ朱色の「平和の鳥居」です。

湖畔の深い緑と、透き通った水の青、そして鳥居の鮮やかな朱色が織りなすコントラストは息をのむ美しさ。かつて上皇陛下の立太子礼や、日本の独立(講和条約締結)を記念して建てられた歴史があります。

その名の通り、静かで平和な祈りに満ちた、大人の隠れ家のような情緒が漂う場所です。

④ 【山口県】元乃隅神社 : 青い海へと駆け抜ける、123基の「龍宮の鳥居」

日本海に向かって、崖の上をまるで龍が駆け抜けるように連なる123基の朱色の鳥居。アメリカのCNNが「日本で最も美しい場所31選」に選んだことでも有名になりました。

晴れた日には、日本海の荒々しくも美しいコバルトブルーと、どこまでも続く鳥居の赤が見事な調和が見れます。大自然のエネルギーと、人間の信仰の形が融合した、生涯に一度は見たい絶景です。

⑤ 【奈良県】大神神社 :神秘のベールに包まれた「三ツ鳥居」

日本最古の神社のひとつである大神神社(おおみわじんじゃ)では、本殿がなく、背後にそびえる「三輪山」そのものを御神体として拝みます。その神聖な山と、私たちが拝む拝殿の間を区切っているのが、全国でも非常に珍しい「三ツ鳥居(みつとりい)」です。

国の重要文化財にも指定されており、普段は拝殿の奥深くにあるため直接見ることはできません(参拝を申し込むことで拝観可能です)。古代から続く日本の原始的な自然信仰の形を、今に伝える究極の聖域と言えます。

おわりに|心を整え、鳥居の向こう側へ

何気なく通り過ぎていた鳥居。しかし、その向こう側にある歴史や神話、そして人々の願いに思いを馳せると、くぐる瞬間の空気の冷たさ、境内の静けさがより一層愛おしく感じられます。

スタンプラリーのような観光ではなく、歴史の息吹を肌で感じる「やさしい旅」。次の旅ではぜひ、鳥居の前で一呼吸。心を整えて、神様の住む世界へ一歩を踏み出してみませんか。

画像撮影:やさしい旅時間